精神面での安心感がもたらす攻めと守りのメリット
職場環境において、
- 新人や若手が遠慮がちで意見が出てこない
- 部下の報告が遅い
- ミスした際に隠してしまう
このような傾向があるとしたら、精神的な面での安心感が欠けています。
精神的な面で安心感のある職場とは、役職などの上下関係はなく、
全社員が自由に意見を言える環境です。
この職場作りを目指すことで、ビジネスにおける攻めと守りの両面で
大きな効力を発揮します。
現場を知っている社員の声がポイントです。
どのような組織においても現場の社員は精神的な面での安心感を保ちにくい
若手が多いです。
しかし、このような若手こそが、日々、お客さんからの生の声を聴き、
最新情報を保有しています。
現場の社員が安心して意見を言える環境は、正しい時代感覚を持ち、
ニーズに沿ったアイデアを創出する力の源になり、
世の中の流れを随時掴み取って対応する変化に強い組織になれます。
この効力は、不透明な世の中を生き残っていく上においても、
欠かせない力となります。
精神的な面での安心感があることで、危険に対して素早くブレーキを踏む力が高まります。
例えば、推し進めようとしているプロジェクトに、実は明らかにリスクがあると
内心気づいているメンバーが、
- 若手の立場では意見を言えない
- プロジェクトに水を差すようなことはできない
と黙ってしまうようなケースはよくあります。
仮に、たった一人の反対意見に対しても、耳を傾けられる姿勢があれば、
先々の失敗を防ぐことが出来ます。
この攻めと守りの効力を備えることで、組織は状況に応じて果敢に、かつ安全に
業務を遂行することができます。
精神的安心感を損なわない上司の対応とは?
精神的な面での安心感が整っている職場は少ないのが現状です。
会議などの場で、『何か意見はありますか?遠慮なくどうぞ』と声をかけても、
ほとんど反応がないと悩む上司も多いはずです。
その理由は、日頃から知らず知らずのうちに、
精神的安心感を損なう対応をしているからです。
その対応の1つ目がミスを叱ることです。
ミスを減らしてほしいがために叱るのですが、皮肉にも叱ることで減るのは、
ミス自体ではなく、ミスの報告です。
人は、ある行動をした直後に悪いことが起こった場合、
その行動をとらなくなることが、行動分析学の研究で明らかになっています。
ミスを報告したら叱られた
↓
次にミスをすれば隠す
という習慣を部下が持ってしまうことで、取り返しがつかない事態になって
初めて問題があからさまになるという最も避けたい悪循環に陥ってしまいます。
ミスを減らしたいのであれば、必要なことは叱ることではなく、適切な指導です。
その時に必要なことは、仮説を立てることです。
上司からみた本人のスキルやモチベーションと状況とを照らし合わせてみます。
- どうして本人はそのような行動を行ったのか
- 本人に失敗の認識はあるのか
- どのような部分が変わってほしいのか
- そのためには何が必要になるか
のように、筋道を立てて考えてみましょう。
その上で、『あなたにはこうなってほしい』という希望をまず本人に伝えましょう。
本人への期待を前面に出すことで、ミスについてもストレートに言及でき、
改善すべき点についても前向きに話し合うことができます。
また、精神的安心感を損なう対応として2つ目に挙げられるのは
発言を頭ごなしに否定することです。
発言者が勇気を振り絞って声を上げても
『的外れな意見だ』
『今はそんな話はしてない』
という反応はいたたまれず、とてもつらいものです。
発言の質が実際に低かったとしても、それを指摘したところで、
質は上がることはありません。
ミスの場合と同様に、発言の頻度のほうが減ってしまいます。
発言の質は、何度も意見を発する中で、次第に上がっていくものです。
その機会を最初から奪ってしまっては元も子もありません。
内容はどうあれ、意見を出してくれたことに感謝を伝えましょう。
発言の質を上げたいのであれば、
テーマについて感じている課題・原因・解決策などの項目フォーマットを
予め作って配布し、記入しておいてもらうことで、本題とのズレも生じにくくなり、
一定レベルに達した意見が集まるようにすることが可能です。
メンバー間で良い衝突が出来る職場を目指そう
会議においては、精神的安心感が最も強く求められる場です。
そういった場においては、司会進行役が会議の冒頭で参加メンバーに対して、
- 精神的な面で安心感のある場にしたい意志
- 数多くのアイデアを望んでいるという希望
- どんな発言でも尊重すること
- 発言したメンバー全てに対する感謝の意
を呼びかけた上で話し合いに入りましょう。
精神的安心感がない場では、メンバー同士の対立が起こりますが、
精神的安心感がある場においては、共通のゴールのために多様な視点を提供し合う
良い衝突が可能になります。
たとえ意見が一致しなくてもメンバー同士は仲間であるという認識が
共有されていることで、たとえ反対意見を言ったとしても、
人格を否定したり、おとしめたりするような表現にはなりません。
リーダーは心理的安全性を備えよう
リーダーは望ましくないコミュニケーションを省き、
望ましいコミュニケーションを増やしていくことが求められます。
その土台として最重要なことが、リーダーの心理的安全性です。
①必要な困難に向き合い、変えられないものを受容する
職場には、様々な困難が発生します。
ミスやトラブルなどの不測の事態は、起きてしまった以上、変えることは不可能です。
また、他人のモチベーションや考え方も、変えることはできません。
それらに対して、オープンな姿勢を保ち、前向きに検討することが不可欠です。
②チームが大切にしていることに向き合い、変えられることに取組む
組織の理念、仕事の意味や意義、目標といったものを明確につかみ、
言語化してチームに伝えて、改善し得る課題に対して、
行動を促していくことがチームの結束を強化します。
③変えられないものと変えられるものを見分ける
この能力を発揮するためには、出来事や状況を常に俯瞰する視点が必須です。
心理的安全性のあるリーダーは、自分の頭の中で俯瞰的な視点を持っています。
人の脳内においては、絶えず様々な思考がよぎっています。
仕事の場で起こる出来事や発言に対して、
『その通りだ』『それはダメだ』
などと、善悪や正誤の判定が次々と行われています。
しかし、それを真に受けないようにしましょう。
例えば、ある意見に対して違うという思考がよぎっても、
すぐに口や態度に出すことは、俯瞰的とは言えません。
そう思考した自分も含めて、全体状況を踏まえて、
一番良い結果になる対応を考える習慣が、心理的安全性を培う一番の秘訣です。
自分の思考を真に受けないということは、
論理的正しさよりも役立つことを重視する価値観に基づきます。
たいていの場合、正論を述べても物事は解決しません。
『ミスをするな』と叱ってもミスが減らないのはその典型例です。
そのため、自分個人の見解はさておいて、最も効果的な対応は何かを第一に考えましょう。
精神的安心感を生むリーダーは単に、優しくていい人ではなく、
最善の結果・成果を目指す人です。
理由つきの感謝で良いチームを維持しよう
心理的安全性の基盤を押さえておくことで、様々な場面で精神的安心感の確保ができます。
1例で、初顔合わせのメンバーが集まる新規プロジェクトのケース。
普段一緒にいないメンバー同士をつなぐのは、そのプロジェクトの意義です。
ここでリーダーがすべきことは、
- 何のためのプロジェクトなのか
- 達成すべき目標は何か
- 達成することで世の中や会社にどのような好影響をもたらすのか
を説明することです。
説明し全員の合意が取れたら、
『全員が意見を遠慮なく言い合える関係でいよう』と伝えましょう。
メンバーは、リーダーが意義を言語化することで改めて価値を見出し、
真剣に取組むようになります。
また、皆で目的を共有するため、知り合って間もない間柄でも、
遠慮なく真剣な議論が可能になります。
一方で、長らく共に仕事をしている間柄のケースは、
精神的安心感のメンテを怠らないようにしましょう。
メンテ方法としては、メンバーに1日1回でも理由をつけて感謝を伝えることです。
成果、アイデア、努力、誠実さなど様々な点を見つけては、
『ありがとう』と伝えましょう。
ミスやトラブルの報告の際にも、
『すぐ教えてくれてありがとう』と伝えるのがとても有効です。
こまめに感謝を伝えることは、一見小手先のテクニックのようですが、
理由をつけて。となるとかなり本気で観察しなくてはできないことです。
その結果、
- 今、誰が何をしているのか
- 業務の流れに支障はないか
- 各人の長所はポテンシャルは何か
という点がクリアに見えるようになります。
精神的安心感を保持することは、リーダーの意識やスキルも向上させる作用があります。
精神的安心感はどの立場であっても環境作りは可能
中間管理職の立場の方であれば、まずは部下を束ねる上司の立場から、
部署の精神的安心感を高めることを行いましょう。
そのうえで、上司や役員の部下としての立場でも、
安心して発言できる場を確保しましょう。
ここですべきことは、部下に対することと全く同様で、
理由をつけて感謝を伝えればOKです。
『発言の機会をいただけてありがとうございます』
『ご質問いただけて嬉しかったです』
などのように、ありがたいと思った行為に対してお礼を言いましょう。
そうすることで相手はこれが望ましい行為だったと認識し、その頻度を増やしてくれます。
精神的安心感をもたらすのは、リーダーの役割であることはもちろんですが、
誰でもリーダーになれます。
役職や地位に関わらず、精神的安心感のある職場を作りたいという
意志を持って働きかけていく人は皆、職場の文化を変えていくリーダーです。
柔軟さと広い視野を持って、伸びやかで強靭な組織を育む営みを是非始めていきましょう。
人生は変えられる!
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